どくん、どくん、脈がどんどん早くなる。指先から冷たくなってゆく感覚がして、なのに、鼓膜へ神経が集中して、二人の会話を取りこぼすことなくかき集める。
「こないだ飲んでたら、雪平たちと会ったんだよね。その時も話してたけど、あの二人、また付き合わないのかなーって」
「え?飲めないからハンドルキーパーになっちゃうくせに飲み会いくんだ、雪平」
「そうなんだよね〜……じゃなくて!いま二人ともフリーだしちょうど良いじゃん。高校の時もハイプリ同士でお似合いだったのに。……あれ、最後は結局翠織が振ったんだっけ?」
「うーん、どうだったかな、忘れちゃった」
お姉さんははぐらかそうとするけれど、お友達らしいその人は引き下がらない。
「もうお互い落ち着いて良い頃だし、そのまま結婚しちゃえばいいのに」
「(……けっこん、)」
すごいなあ、わたしは付き合うこともゆめみたいなのに、灰慈くんと同い年なら、結婚も視野に入っちゃうんだ。すごいなあ。夢なら何度でも見れちゃうけど、現実では想像もつかない。
「や、本当にありえないから。それより……」
「ありえなく無いよ」
「ありえないよ。だって私が振られたの。未練なんてありません、だからもう終わり」
お姉さん……翠織さんは強引に話を終わらせた。



