気を取り直してカットされた塩キャラメル味のりんご飴をピックで突き、口に運ぶ。やっぱり美味しい。
「結局灰慈くんのこときいてないじゃん」
「あ、しまった……」
でもりんご飴はやっぱり美味しいし、お姉さんのことは灰慈くんに聞けば良いや。
年齢は知らない。名前も知らない。ハイプリに出たことがあること、りんご飴のお店で働いてるってことだけで分かってくれるだろうか。でもあのお姉さんだったら、プリンセスになってもおかしくないよね。
青葉くんとりるちゃんが、共通の趣味であるお笑いの話をしている中、わたしは何となく想像してみる。
「ねえ、翠織、彼氏と別れたってまじ?」
想像していれば、お姉さんとは別の声が届いた。みおり、という名前をなぞっていれば「ねえ、声が大きい!」と、お姉さんがなだめている。イートインスペースがあるとは言え、狭い店内だから会話は筒抜けだ。
「てかさあ、ずっと気になってたんだけど。翠織、雪平とヨリ戻さないの?」
まるで、細い隙間をするりと風がなでるように、その名前が耳に届いた。引かれるように振り向く。レジカウンターでは当たり前のように、みおり、という名前のあのお姉さんと、やっぱりお友達らしい人が話している。



