「も……もしもやなことがあったらこの顔思い出して!灰慈くんの周りが全員敵になっちゃっても、わたしだけは常に味方だから、安心してね!」
「ふみ、飲み会を戦場かなにかだと間違えてない?」
「え!ちがうの!?パパは毎回、怖いって言ってるよ?」
愕然としていれば、不意に衣擦れの音が聞こえた。見上げる。灰慈くんの手が伸びてわたしの頭の上にゆっくりと二度、優しく乗せた。
「ありがと」
頭ぽんぽん、してくれた!
きゅう……っと心臓がドキドキと高鳴るのを感じていれば、灰慈くんは突然、わたしの耳元まで顔を近づけた。
「そんなことしてくれなくても、いつも思い出してるよ」
耳元でささやかれた甘い言葉に、息が止まりそうになる。
それに、いつもって。……いつも?
よろよろと視線を縫い上げる。灰慈くんは春のはじまりのようなやさしい笑顔を浮かべているから、恥ずかしくて俯いた。
これだから灰慈くん推しは辞められないのだ。



