お姉さんと話を咲かせたあと、テイクアウトでカフェラテを注文した。差し入れという名目の、灰慈くんを誘惑するきっかけとして。
「また来ます」
「うん。待ってるね」
お姉さんと別れ、カフェラテの写真を一枚撮る。
《間違えて注文したから、届けに行ってもいい?》
あざとい気持ちを嘘で塗り固めて灰慈くんへ送信した。ご愛嬌ってことで、許してほしい。
《俺が行くから、そこで待ってて》
傍から見れば──いや、灰慈くんであればすぐにわたしの嘘を看破しただろう。しかし、それを踏まえたうえで王子さまは誘惑に乗ってくれた。
灰慈くんのお仕事が早く終わる期間のことを、ご奉仕期間と呼んでいる。せっかく終わる時間がほとんど同じなのだ。放課後のデート気分だったり、普段であれば出来ない空気感を味わいたいのだ。出来るかぎり。
今日も車でお迎えに来てくれた灰慈くん。朝と似通った清潔感を纏っている。目覚め直後の気怠い雰囲気はもう見慣れているけれど、灰慈くんの疲れた表情はあまり見たことがない。
「どうしてカフェラテを間違えて注文するかな」
スーツ姿の灰慈くんは、知的な雰囲気が増していると思う。これに眼鏡が加わると鬼に金棒ってやつだ。わたしの心臓はそれだけでクリティカルヒットをお見舞される。今日は眼鏡じゃないので、心は穏やかだ。けれど、ハンドルを持つ手がいけない。手の甲に浮き出た骨と血管が素敵で、視線は常にうばわれがちだ。



