けれど。
「……灰慈くん、寝ないの?」
灰慈くんの気配を感じて目を開けた。手を伸ばせば届く距離にいる灰慈くんは、スマホをさわっている。
「あー 、うん。女の子と一緒にベッドにいるのに何もしないっていうの、ふみくらいだから」
視線だけでわたしを見遣ると「悪い人でしょ、おれ」と、灰慈くんはわずかに口角をあげた。
「そうかなあ……勉強中にお昼寝の時間くれるから悪い人じゃないと思うな」
よく分からないけれど、少なくともわたしの望みを叶えてくれている。決して悪いことではない。
「ふみには悪いこと出来ないな」
「わるいこと?」
「おいで」
疑問の解決を放棄した灰慈くんに呼ばれて、選択肢がふたつ。行く、行かない。どうしよう。……行っちゃえ!
ころころと転がって灰慈くんの元へたどり着く。「なにそれ」と灰慈くんは面白そうにする。我ながらだいたんなことをしたなあと恥ずかしさがこみあげるので「やっぱり、はなれる……」と距離を取ろうとすれば、
「だめ」
甘い声に刺された。
──やっぱり、どうかんがえても眠れそうにない。



