「ふあ、」
つい、気が抜けた、というよりも安心感の方が大きい。灰慈くんのお家にいると、最初は緊張するけれど、灰慈くんがわたしを甘やかしてくれるので、うっかり眠ってしまいそうになる。そんなわたしの様子をみて、灰慈くんは心配そうに覗き込む。距離が近すぎて、心臓がびっくりする。そのまま灰慈くんが腕をかけるので、ソファーがぎしりと音を立てた。
「どうした、また夜眠れなかったりするの」
俺、聞いてないけど。と、灰慈くんは不服そうに眉根を寄せた。いま、灰慈くんのお家でお勉強中だ。灰慈くんはなんと、頭も良いのだ。そして久遠寺ふみは、数学がだいの苦手だ。だからこうやって、定期的に分からない場所をおしえてもらっていたりする。
けれど、数字を見ていたら眠くなりました、とは言えない。
灰慈くんが用意してくれたドーナツのおかげでねむさがマックスになりました、なんてもっと言えない。
「そんなことないよ。平日はだいたい安眠できてますよ?」
「だいたいってことは、昨日はちがうのか」
そう、原因はもっと単純だ。
「うーん……今日は灰慈くんとやくそくしたから、かなあ」
正直に口を割って、うーん、と伸びをすると、灰慈くんは「あー……」と、何かを考え込めば「じゃあ、お昼寝する?」と、わたしに提案した。



