ママには、相談されたその日の夜すぐに話した。するとママは『ふみがこんなに小さい頃から、灰慈くんはふみのお願いを聞いてくれてたから、お返ししないとね』、『誕生日プレゼントだった"何でも言う事を聞く券"をふみの為に使ってくれたの覚えてる?』と、もう思い出すことが少なくなって、忘れかけた過去を交えながら、わたしの気持ちを尊重してくれた。
わたしの宝物を、大切にしてくれる人だ。
「分かってます」
分かってるけど、たぶん、パパはこれだけじゃあ納得してくれないだろうな……。
「じゃあ、ママにちゃんと感謝しような」
諦め半分。けれど、パパは案外あっさりと折れた。あのパパが。
呆気にとられて、一拍。
「それだけ?」
「それだけ。ふみがママに似てくれて良かったよ」
「ちょっと、初恋は早すぎたけどな」と、パパは軽く笑いながらそう付け足して、シューズラックからわたしのローファーを取り出し、足元に並べてくれた。代わりに、パパ用の靴べらを探して手渡す。
「そうかな、ママも初恋はわたしと同じころだったらしいよ」
少しだけいじわるをすれば、「ふ〜ん」と、パパはつまらなさそうにするけれど、どこか余裕が見えた。



