メルティ・エモーション

これって、間接キスじゃないのかな……。

ドキドキしながら見上げた。灰慈くんはあまり気にしていないらしい。わたしばかりが意識している。これはきっと、永遠に。

お互いのドリンクの感想を言い合いながら、いつもと違うバス停から、いつもと同じ行き先のバスに乗る。隣同士、並んで座る。朝とはちがって、からんとした、ひとの少ない車内。ゆらり、ゆらり、揺れるバス。心地よい。となり合う、灰慈くん。触れる肩。触れ合う体温が心地よい。


「ふみ、俺来週から少し早起きになるんだよ」

やんわりと紡がれる言葉。釣られるように、灰慈くんを見上げる。見上げた先にいる灰慈くんが近すぎて、かっこよすぎて、心の奥がきゅんとした。けれど、早起き、というワードは一緒に行けないことを暗示させているので、すぐに落ち込む恋心。

好きな人の一挙手一投足で一喜一憂する。幼い恋わずらいの弊害だ。

「そうなの?大変じゃん。灰慈くん、朝起きるの苦手なのに」

「な、だるいよな」

灰慈くんが同意を求める。

「大丈夫なの?」

「大丈夫じゃないかも」

わたしも同じです、は、心の中で唱えて、前を向いた。

「それで、提案。ふみ、少し前に車もいいかもって話してたろ、通学」

「うん、話した」

灰慈くんの車限定で、は内緒にした。これは乙女心だ。

「俺を起こしに来てよ。お礼に、車で送るから」

「!」

やっぱり、一喜一憂。灰慈くんは特大の喜びをくれる。