「ねえ、あの人ビジュ良すぎ」
「ほんとだ、かっこ良……!」
幸せぽやぽやなわたしは、心の声とおなじ声を拾ったおかげで現実に戻った。そうだ、周りは可愛い女の子が多いんだ。灰慈くんが目移りする可能性がある。それはやめていただきたい。お願いだから。
「待ってないから平気です。向こうに行こう」
灰慈くんを女子コーナーから遠ざけながら、平気を口にした。灰慈くんはくすりと微笑む。
「雑な嘘をつくな」
「嘘じゃないもん」
「今日何時に学校終わったの」
「16時半くらいかなあ」
「待ってるじゃん」
灰慈くんはどうしても「待たせた」にしたいらしい。わたしが勝手に待ちたかっただけなのに、どうか自分を責めないでほしいので、マイルールで強行突破する。
「待つ時間も楽しかったから良いの」
これで終わり、そう思いたかったのに「どれくらい待った?」と、灰慈くんは続ける。
「うーん、30分……一時間くらいかな」
「わかった。だったら今度俺の一時間をふみにあげるから好きに使って」
「!」
灰慈くんは、わたしにご褒美を与える天才だ。



