それは、あの、聞き捨てならないセリフなのでは?
けれどどうしてか、聞きたいことを全部飲み込んだ。
分かるのだ。わたしも朝から灰慈くんに会いたくて、灰慈くんと同じ時間を狙っちゃうもん。向こうはいつも通りなんだろうけど、こっちは必死でいつも通りを作ってるんだ。大変なの。狙ってると思われても困るし、だからといって、計画通りにならないのもやだ。
拗れたわがままはなかなか厄介で、そんなややこしい感情を抱えながら高校生活を送っている。
分かる、分かるから、困る。
「…………えっ、顔、赤くない?」
青葉くんがわたしを覗き込む。まっすぐな瞳に見透かされそうになって、咄嗟に逸らす。
「な、なんでもない!わたし、先いくね」
その瞳から逃れるように階段を駆け上がり、息を整える。
どうしよ、避けた、みたいになっちゃったかな……。
友達として素っ気ない態度だとしても、そっちを選ぶのは何故か。
「おーい、おふみ、待ってよ」
追いかけてくれたりるちゃんと目を合わせ、それからすぐに、すんと下を向く。
「青葉と何かあった?」
「ううん、べつに……何もないよ」
「そうは見えないよ?」
りるちゃんに喜んで誓うよ。ほんとに、何も無いんだ。



