「オハヨー」
ふと、別の声が背後から届いた。青葉くんだったので「おはよう」と、朝の挨拶を送り返した。青葉くんは朝が弱いのかいつも眠そうだ。足取りは軽くとも肩の辺りに覇気がない。
「おはよー。青葉昨日の”manzai“の予選特集観た?私ブラックウニウーマン好きなんだけど、あのネタ超微妙じゃない?青葉と天鷹のコントのが面白いわ」
りるちゃんは昨日のテレビ番組、または配信番組だろうか、わたしには分からない内容を話し始めるので、聞き役に回る。
「あの有村さん。俺は天鷹とコントをした覚えもないし、何より俺が観た前提で話すのやめてくれない?」
「だって観てるでしょ」
「観たけど」
観たんだ、と、思わずくすりと微笑むと、「お笑いは観るよね〜」と、青葉くんは返事をしたからびっくりだ。心の中の声が漏れていたらしい。
「ねえ、青葉もビジュめちゃくちゃ良いんだし、私にプロデュースを任せてくれたらお笑い芸人も目指せると思うな。多分顔だけでバズるよ?」
「うん。芸人は目指してないから遠慮します」
青葉くんは満面の笑みだ。その笑顔が、お兄ちゃんが浮かべる営業用の笑顔にまるでそっくりだ。



