メルティ・エモーション




「意識した?」

見透かされているのは認める。ずっと前からこうだ。けれど、素直に、はい、そうですって言えない。言えるはずがない。

「いつもしてたよ」

背伸びして、すました返事に変えると「そ」と、灰慈くんはふわりと軽く微笑んで、やって来たバスへと促す。バスに吸い込まれる列の最後に並びつつ、灰慈くんを見上げた。

「信じてないよね」

「信じてないよ」

「好きになった瞬間から意識してたよ」

多分、を自信なさげに付け足した。すると灰慈くんは「多分かよ」と、それを見逃してくれない。大人な灰慈くんは、たまに子どもになる。

「やっぱり、絶対。絶対その時から意識してたもん」

そうに決まってる。わたしは、過去のわたしを、その恋心を信じることにする。そんなわたしを見て、灰慈くんは微笑む。わたしの好きな笑顔を、惜しげも無く見せてくれる。

「じゃあ、俺もしてた」

彼はわたしを甘やかそうとする。両手を広げるようにして、真正面から、こんなにも分かりやすく。

「信じてねえな」

だけど、こんな風に甘やかされるのは初めてだ。朝からたくさんのお砂糖を補充させて、わたしを一体どうしたいの。

「(顔、あつい……)」

多分、灰慈くんもちょっとだけ、いつもと違う。