10秒しか話せなかったけれど、灰慈くんは楽しそうにしていたからちょっとだけ安心した。わたしが子どもなので面白がっていたのかもしれない。
灰慈くんと久しぶりに会えるということで無駄に早起きしても毎朝のルーティンはそれほど変わりはないし、意味もなく鏡を見てもいつもと変わらないわたしが映るだけ。
せっかく、アイドルがはまってるっていう小顔になれるマッサージや、ぷるぷるになるっていうリップケアも毎日欠かさなかったのに。
いつもの日常に、ほんの少しの異変。
いつもと同じ通学路。今日も灰慈くんへと続く道のりをてくてくと歩く、いつもと同じになるはずのわたしの朝。
だけど今日は、バス停が近づくにつれて、心臓が変にドキドキと高鳴って大変だった。
なんで?どうしてわたし、灰慈くんに会うだけなのに、こんなに緊張してるの?
わたしに聞いても答えてくれない。同じ歩数でたどり着いたバス停。ほぼ毎日のことなので、同じ時間のバスを待つ顔ぶれは一年や二年ではほとんど変わらない。灰慈くんはすでに、その一員となっていた。
おはようっていつものトーンで言えばいい。
けれど、おはようが喉の奥に留まって吐き出せない。
「(どうやって挨拶してたんだっけ……!)」
いつもと同じを心掛けると、いつものことが出来なくなる。おかしい。
やっぱり、今日のわたしはいつものわたしじゃない。



