メルティ・エモーション


『好き』と言って『うん』や、『そうだね』以外の返事が届く日が来るなんて。その答えが『嫌い』や『無理』であれば、わたしはこの先10年は引き摺っただろう。けれど灰慈くんは優しいから、わたしのこんな性格を理解したうえで、宥めているんだって思っていた。子どもをあやす時のように。

けれど、ちがった。正解は、わたしの想像とは真逆だった。


──灰慈くん、わたしのこと恋愛対象って、言った?

言ったよね。そう聞いたよね?

キスもしたよね。軽いそれだったけど、間違いなくあれはわたしのファーストキスってことで認識して良いよね?


そんなことばかり考えていたから、変な熱が出た。心に余裕ができるとすぐにあのことを思い出しては大変だった。

そんなふうにゆっくりと、慌ただしく過ごしていたから、残りの夏休みはあっという間に過ぎ去って、あれよこれよと言う間に新学期が始まった。

わたしは新学期だけど灰慈くんにとっては当たり前に関係はなく、灰慈くんは8月の後半からしばらく出張で、あれ以来、会うのは今日がはじめて。

だから、なのか。


「(どんな顔して会えばいいのかな……)」


会えなくても、灰慈くんはわたしが寝る前を見計らって電話をかけてくれた。通話は普通に出来た。けれど、ビデオ通話になると、今まで平気で出来ていたはずなのに、わたしをの全部、丸ごと見られてるみたいで、途端に恥ずかしくて、10秒が限度だった。