灰慈くんの香りと体温。多分わたしは、今日のこの瞬間を、ずっと忘れないと思う。きっと。
今までわたしが経験してきた感情の、どれをかき集めても言い表せない、そんな感覚に胸をふるわせながら、口を開いた。
「……灰慈くん」
「うん」
「好き」
「……うん」
「大好き」
開いても、どうせ、わたしの語彙力には告白の類しか用意されていない。
我ながら、こんな時にまで好きや大好きしか言えない自分に辟易して、ふがいなくて、視線を落とした。
「……ふみ」
灰慈くんのフラットな声がわたしを呼んだ。わたしが見上げるよりも早く、灰慈くんはわたしの耳元に顔を寄せるから、相変わらずわたしの心臓はドキドキと鼓動を早くさせた。



