《今、時間ある?》
灰慈くんに連絡を入れると既読はすぐに付いて、それから返事の代わりに着信が届いた。
「どうした。友達とはぐれた?」
出ると、灰慈くんはすぐにわたしの心配をしてくれた。優しい灰慈くんのことが、わたしは大好きだ。
「ううん、はぐれてない。一人だけど、自分から一人になった」
「……どういう意味?」
「灰慈くん、まだお仕事してるの?」
「……いや、ちがう」
「じゃあ、お家にいる?」
「いない。ふみは早く友達のところに戻れ」
「やだ。わたし、灰慈くんのこと待ってても良い?」
「駄目。来るな」
「いま、灰慈くんのお家に向かってるから。ダメって言っても聞かないから」
「……ふみ」
「わたし、大人じゃないもん。大人じゃないから、大人の理屈なんか知らない」
「ふみ」
「わたしは灰慈くんと一緒がいいの」
灰慈くんから行けないって言われた時、良いよって言ったけど、本当は、終わるの待つよって言いたかった。会場に行けなくてもいいから、灰慈くんがお仕事終わるの待って、穴場スポットに行って、見てもいいんじゃないかなって考えたりもした。
灰慈くんに迷惑を掛けたくなくて我慢したのに、結局我儘になるくらいなら、最初から我慢なんてするべきじゃなかった。



