メルティ・エモーション



「でも灰慈クンは久遠寺の意見を全部は尊重してくれないと思うな」

青葉くんはきっぱりと言い切る。わたしの嫌な顔は見たくないって言いながら、わたしの不安を煽るのはなぜなのか、わたしは青葉くんじゃないからわからない。

「……なんで分かるの?」

「わかるよ。久遠寺は分からないかもだけど。ていうか多分、一生気づかないと思うけど、俺は灰慈クンとおなじだから分かる」

だけど青葉くんは、灰慈くんと"同じ"だから、分かるという。

「何それ。例えば?」

わたしは幼なじみなのに分からない。

「言わない。自分で気付くまで、言わない」

「むー……けち」

口を尖らせる。ずるいと思うし、困るし、尊敬するし、仕方ないのかなって思う。青葉くんは、そんなわたしを見て楽しそうに肩を揺らした。

「だから、ごめん。俺、こないだ灰慈クンに会った。会って、ちょっと八つ当たりした」

それから、わたしとしてはかなり驚きの現実を教えてくれる。灰慈くんと会った、という事実よりも、気になることは別にあった。

「青葉くん、やなことあったの?」

覗き込んだ。青葉くんの瞳は、先程見かけた、金魚すくいの水面のように揺れては「うん、まあ俺のことはいいから」と、言葉を濁した。