メルティ・エモーション



「たくさん選択肢を選ばせてくれて、その中で選んだものを灰慈くんは尊重してくれる」

でも、今回はちがう。灰慈くんは、頷いたことを取り消したりしない人だ。余程仕事が行き詰まっているんだろう。こんな想像しかわたしは出来ない。

わたしがもしも大人だったら、突然のリスケも理解してあげられると思う。だからこそ、今回のことは『上手な彼女』への試練だと思った。

「ヒヨコにもちゃんと意思はあるのになあ」

灰慈くんの理想に近づきたい。上手な彼女になるために頑張りつづけたい。

「久遠寺、すげー大事にされてるな」

「そうかな?子供扱いされてるだけだよ。わたしはいつ、恋愛対象になるんだろうってずっと思ってる」

仕方ないけどさ、を付け足して、強がりの笑顔で隠した。

「俺は灰慈くんじゃないから分かんないけど、俺だったら子供扱いする為にわざわざ花火大会の約束とか、朝一緒に行くこととか、仕事から真っ先に帰るような、相手の願いを叶えるために自分の時間を犠牲にすることはしないかな」

わたしがいつも惚気けているから、青葉くんは灰慈くんの行動を熟知しているし、自分が話したことなのに、人伝に伝わると、こうも違う色をして見える。

大事にされている。そうかもしれない。自分じゃ気付かない、分からない場所で、わたしが思うよりもずっと。

「青葉くんは応援派なの?それとも諦めさせたい派の?」

「うーん、久遠寺がやな顔してるのは見たくない派」

青葉くんはそう言って、困ったように眉を下げた。