「久遠寺は、それで良いの?」
ふと、投げられた言葉に「わたし?」と首を傾げた。
「久遠寺は自分の青春を犠牲にして、全部灰慈クンに捧げてるじゃん。それで良いの」
「良いよ」
わたしの答えを聞いた青葉くんは「即答?」と笑い、分かってたけど、を付け足した。
「だって、それがわたしだもん。いいに決まってる。逆に、悪いなんて考えたことない」
言いながら、ふと、言葉が喉の奥に消えた。
「でもきっと、灰慈くんはダメって言う。わたしを" 普通 "のレールに乗せようとしてくれる。言ったことも、聞いたこともないけど、なんとなくわかる」
無理して普通じゃない行動を叱り、素のわたしで良いよと言ってくれた。
「へえ、わかるんだ」
「うん。わたしが色んなものを犠牲にしているとして、それを一番危惧してくれているのは多分灰慈くんだもん」
後れ毛を耳にかけて、それから、耳の後ろに留めているヘアピンに触れた。灰慈くんがくれたものだ。
今日だって、遅くなりそうな時は連絡してと言われた。迎えに来てくれるって。それから、もし行くなら友達から離れずに、一人になるなって言ってくれた。



