メルティ・エモーション


その後も青葉くんは言葉を濁すので、諦めて別の話題を掘り下げることにした。

同じ景色、同じ匂い。真新しい記憶と結びつくのは必然だ。

「わたしね?去年もこの花火大会に来たんだ」

「うん。知ってる」

「それで──え、なんで知ってるの?」

舌先を転がり落ちそうになった思い出を堰き止めて、疑問をぶつけた。

「去年、久遠寺のこと見かけたから知ってる」

「そうなの!?」

青葉くんは口元をふっと緩ませ、それから遠くを見つめた。知り合いに見られていたなんて、全然知らなかった。

「久遠寺に彼氏がいるって噂で聞いてたから、例の彼氏か、って。久遠寺がめっちゃ楽しそうだったから、すげー好きなんだろなって、感想は、そんな感じ」

そう、中三の時は受験で行けなかった。中二の時、灰慈くんは出張だった。初めて灰慈くんと二人で一緒に行けたのが去年の花火大会。だからこそ特別で、すごく嬉しかった。来年も灰慈くんと一緒に行きたいって言えば、来年も同じ気持ちなら良いよって言ってくれた。