花火大会、行くのやめようかなって思ったけれど、灰慈くんに" 写真を撮って送る"と約束したので行かなければ。
人の波がゆっくりと流れていく。浴衣の裾がすれ違って、風鈴みたいにかすかな音がした。
夜風が肌を撫でて、うなじのあたりが少し汗ばんでいる。焼きそばのソースの匂い、遠くで笑う子どもの声。ぜんぶが、夏の音だった。
「ふみ、可愛い!」
「天才?」
「超似合うよ!」
一緒に居てくれる友人たちはわたしを快く受け入れてくれるばかりか、こうやって褒めちぎってくれたから、わたしの自尊心もみるみる回復した。
「本当?嬉しい〜!」
「写真撮ろ、写真!」
しかし、大丈夫って思ったのも結局は強がりで、会場内に溢れるカップルを見れば羨むのは必然だった。良いなあって何回思っただろう。
「なんで灰慈くんと一緒じゃないの」
そんなわたしを冷やかすように見下ろすのは青葉くんだ。近頃、青葉くんは意地悪だって気づき始めた。
だって、人が触れてほしくないことをあっさり触れてくるんだもん。
「お仕事だってさ」
隠してもしかたないので本当のことを話せば「は?なんだよあいつ」と、青葉くんは苛立ったように眉間に皺を寄せた。
「青葉くん?お顔が怖いよ?」
青葉くんとは夏休み期間中にプールに行った。お互い、したいことを言い合って決めた。最初は二人で行く予定だったけれど、誰かが予定を聞き付けたのか、仲良い子が数名集まって、普段と変わらない日になったのも、記憶に新しい。



