灰慈くんの、彼女……。
それは幼い少女だったときから思い描いていた理想の自分だ。少し考えてから、わたしは小さな声で答えた。
何度も、何度も何度も夢に見て、想像上のわたしはいつもどんな時でも完璧で、欠点なんてひとつも無い。
理想と現実の乖離は顕著だ。
「もし、いま灰慈くんの彼女になれたとしても、上手に彼女ができる自信がない」
素直な気持ちを告げると灰慈くんは笑って、「ふみらしい」と言った。馬鹿にすることも否定もせずわたしを受け入れてくれるその優しさに、また胸がいっぱいになる。
「灰慈くん、大好き」
そして毎日欠かさない、変わることのない、今日の分の大好きを届けた。好き、という感情がわたしの背中を押す。
そういえば、灰慈くんはドルオタなんだっけ……?
もしドルオタなら、どんな子が好きなのか教えて欲しい。その人へと近づけるように努力は惜しまないから。
「ねね、灰慈くんって、本命の人いるの?」
少し前更新された灰慈くんの情報をどうにか引き出したいわたしは少しだけ調子に乗った。
「どっちだと思う?」
灰慈くんの目はやさしい形をしたままだ。
「いない、と思いたい」
「いなくていいの?ふみのこと、本命じゃないのかもしれない」
「……あ、う……じゃ、あ、いる」
「いていいんだ?」
「……いじわる」
灰慈くんが微笑むと、心臓が、また跳ねた。息ができないまま顔が近づくから、おもわず、目を閉じた。



