メルティ・エモーション



「そっか。灰慈くん、本当に今日のお仕事、早く終わったんだね」

「うん。まあ、今日は休みだけど」

「休み?今日はお仕事だったよね?」

「ふみ、今、朝の6時」

「えっ」

朝?朝の6時?

思考回路が追いつかず「朝?」と再確認すれば、真上で灰慈くんの尖った喉仏が上下するのが見えた。

「そう、朝だよ」

灰慈くんの言葉によって、覚醒率30パーセント足らずの脳内は一気に目覚めた。

灰慈くんの治安維持のため部屋を涼しくするだけのはずが、居心地が良すぎて寝ちゃうなんて、なんたる不覚。

「わたし、泊まっちゃったの!?」

「うん。パパママには説明した」

「だ、大丈夫だったの!?」

「久遠寺先生が迎えに来るって言うから、全力で阻止した」

「ご、ご迷惑をおかけしました……」

「いいよ」

気づいたら、灰慈くんの手が動いていた。その腕がわたしの肩をそっと引き寄せる。抵抗する間もなく、体が灰慈くんの胸の上に滑るように乗ってしまった。

「……こっちの方が落ち着く」

低くつぶやいた声が、胸の奥で響く。

灰慈くんの腕が背中をまわり、わたしの頬が彼の胸にぴたりと触れる。鼓動が近すぎて、呼吸のしかたがわからなくなる。

「動くなよ」

その一言がやさしくて、ずるい。