夢を見ていた気がする。果てしなく幸せな夢だった。灰慈くんの顔がそこにあって、灰慈くんの背中に腕を回せば、灰慈くんはわたしの背中に手を回してくれて、練習の成果が出たって喜ぶわたしと灰慈くんの距離がだんだんとゼロになって、くちびるに触れた体温が、わたしのぬるくなった熱を再び呼び覚ますのは容易いことだった。
そう、ただひたすらに甘い夢を見ていた気がする。
突然、なにか違和感に気づいてまぶたを持ち上げた。
真っ先に飛び込む、眠る灰慈くんのご尊顔。仄白いLEDライトが彼の輪郭を映し出していた。
……夢?
わたしはソファーにいたはずだし、ここは灰慈くんのベッドルームだし、灰慈くんのベッドだし、どう言ったわけか、ここで寝ているし。
現実と夢の境界線が分からなくて手を伸ばす。指先が現実だと教えた。
グレーの枕と明るいベージュ色の真っ白のシーツの上に投げ出されたくたびれたシャツの袖、ネクタイを外した後と、外されていない腕時計。
「灰慈くんだあ……」
寝起きの喉は発音が下手だ。そんな声でも灰慈君には届いたらしく、彼の琥珀色と出会う。



