早く会いたい。会って、目を見て話したい。わたしの恋心は欲深くなる一方で、深さは底知らず。
普段、灰慈くんと一緒に座るソファーに一人で腰掛けた。灰慈くんのソファーは座り心地座がとても良くて、一度座るとなかなか立ち上がれない。ついうっかり門限を忘れて、灰慈くんに言われるまで気づかなかったこともある。
一人でもいいけど、やっぱり二人がいいなぁ。
灰慈くんにとって仕事で一瞬のことかもしれないけれど、待つ時間ってとても長い。
「待たせてもらえているだけ、しあわせなのかなあ」
いつかの言葉が思い出される。
──『ぬるま湯みたいだな、オマエと、灰慈の関係は』
あれは金木犀が香る、去年の秋だった。ふと、わたしの恋愛を天くんが形容した。
当事者なのに、わたしはまったく理解できなくて『どういう意味?』と、首を傾げた。わたしに興味は1ミリも傾けていない天くんは、全て他人事のような温度で説明してくれた。
『熱くても、適温でも、水でも、いずれにしろ風呂から出たくなるじゃん』
恋愛の話がいつの間にかお風呂の話に変化してしまって『なにそれ』と、そっぽを向こうとすれば『まあ、聞けや』と、天くんは頬杖をついた。
『でも、ぬるま湯だったらそうはならない。徐々に体温が低くなって、知らない間に死ぬ』
──そんなことないもん。
『今は良いかもしれねえけど、いつかしんどくて耐えられなくなるかもな、ふみ』
すぐに否定できなかったのは何故だろう。



