しっかりと落ち込んで、手土産のナッツとゴルゴンゾーラのクッキーを置いた。おばあちゃんから教わった自慢のレシピだ。すると、テーブルの真ん中にメモ用紙が置かれていることに気づいた。
《冷蔵庫にプリンあるから食べて》
ちなみにプリンはわたしの大好物だ。ということはわたしへの書き置きと受け取って、冷蔵庫を開けた。チーズ、流動食、お酒、炭酸水、ヨーグルト、それからプリン。
「ミルシュカのプリンだ……!」
わたしが大好きなパティスリーだ。意図してこれを選んでくれたのかな。それとも、偶然?
嬉しくて、手を伸ばした。けれど、やっぱりプリンを元に戻した。だって、灰慈くんと一緒に食べたいもん。
《プリンありがとう。灰慈くんが帰ってきて一緒に食べよ》
メッセージを送ると、返事は案外早く届いた。"了解"または"分かった"だと勝手に完結させていれば《今日、早く終わるかも》と、灰慈くんはご褒美のようなメッセージを知らせた。わたしにとって、速報レベルの朗報だ。
《すごいね!早く終われるの?》
《頑張ってるから》
頑張る灰慈くんなんて全然想像できない。
《頑張ってるの?》
《うん。早く帰りたいから》
そりゃあ早く帰りたいよね。パパも毎日のように、早く帰りたいって言ってる。
あれ……?でも、灰慈くんは家でゆっくりしたいのかな……?
金曜日だし、一週間の疲れが溜まってるよね?そうだよね?
悶々と悩んでいれば、スマホの受信音が鳴った。
《だから、俺が帰るまでそこに居てよ》
メッセージが灰慈くんの声で脳内再生された。



