「わたしにも、よそ見しないおまじないさせて?」
そしてあわよくば、彼の心も捕まえたい。
よくばりなわたしは、彼という光を見つけたその日から手を伸ばしている。
項に手を当てた彼は、ふいに視線を宙に投げ、わたしに戻ったその瞳は、意地悪な形をしていた。
「届いたらね」
届くはずがないのに……!
背伸びをしても灰慈くんの額には届かない。しかたないので「むー……!」と頬を膨らせると、灰慈くんは気持ちよさそうに笑った。
「球技大会、がんばれ」
「うん。がんばる!灰慈くんは球技大会、なんに出たの?」
「俺もバスケ」
「そうなの!?野球じゃないの?」
「野球無いじゃん。俺が三年の時、相手のチームが久遠寺先生のクラスで、途中で久遠寺先生が乱入してきた」
「え??なんで?」
「しつこかったなあ、あの時の久遠寺先生」
先生って参加OKだっけ?とか短く悩んでみる。けれど灰慈くんとパパが楽しそうにバスケするのを想像すると楽しくて、笑みがこぼれるのは必然。
「俺も参加出来たら良いのにな」
ぽつりと告げられた言葉は消えそうで、届かなかった。



