ひとしきりバスケの練習に付き合ってもらうと、気分転換にと別のアクティビティへと向かった。
「うう、野球無理だ〜」
野球のバッティングエリアでホームラン、をかっこよく決めるはずが、空振りばかり。快音が響くのは隣の灰慈くんだ。
元々灰慈くんは野球少年だった。中学までだけど、わたしも何度か観戦に言ったことがある。その時も……と、過去を語り始めるとキリがないので自重する。
「ふみは腕が開きすぎ」
灰慈くんはわたしの背後に立つと、腕を支えて打ち方の指導をしてくれた。
「(わ……ちかい……!)」
「ボールが近づいたら腕を引き寄せて……こう。……わかった?」
灰慈くんに促されて、ゆっくりと動く上体。こんな時でも灰慈くんの声はお砂糖みたいだし、いい匂いがするし、声が身体へ直に叩き込まれるようで、どうしても集中できない。
「(意識しちゃダメ、意識しちゃダメ、)」
呪文を唱えていると、ふ、と耳に息を吹きかけられ、「ひゃうっ!」と身動ぎした。
「ふみ、俺に集中」
「ごめんなさい!」
「1回打てたら許してあげる」
こうやってやんわりと圧を掛けるのは、大人の意地悪だと思う。



