メルティ・エモーション

トントンとドリブルをつきながら、青葉くんを見上げた。

「青葉くんが明日購買部で狙ってるパン全部ゲットできるように祈るね」

「え?なに急に。食べたいパン全部買えたら確かにラッキーだけど」

「あと、青葉くんが出かける時はいつも晴れであってほしい」

「はは、球技大会の時は晴れると良いな」

青葉くんは爽やかに微笑むと、パスしよう、と言って右手を挙げる。しばらく悩んで、青葉くんの胸元に向かって思い切りボールを投げた。わたしとしては届けるつもりで投げたのに、全然届かなくて、大きく一歩を踏み出して、両手で受け止めてくれた。

青葉くんが距離を縮めてくれる。再度ボールを届ける。今度は届いて安心する。私の方に届けられるボールは、手元に吸い込まれるように飛んでくる、まっすぐと。

彼女はいないって聞いた。

「青葉くんって、恋愛してる?」

パスをしながら訊ねてみた。

「突然だな、なんで?」

青葉くんは戸惑いながらもわたしにボールを届ける。もう一度投げた。

「もしも青葉くんに好きな人がいたら、その人と両想いになれるように協力したいなって思って」

青葉くんが投げたボールはすこし外れた。

「協力してくれるんだ」

「うん。だからいつでも言ってね!」

「(青葉くんには、いいことが沢山あって欲しいな)」

優しさをくれた人に分けたいと思ってしまうことが、悪いこと、なのか。