メルティ・エモーション


「だったらふみ、すげえ悪い子じゃん」

さらに、聞かされたのは不安を煽るから「……え?」と、おそるおそる訊ねた。

「今まで俺に何回〝お化け怖い〟ならまだしも〝猫が怖い〟〝カラスが怖い〟って言った?」

「……わ……わかんない」

「俺はふみのことを、いつ悪い子だって言った?」

「それは……」

耳を塞ごうとしているわたしでも分かるように灰慈くんは教えた。

パパの約束を破ろうとした時とか、灰慈くんをゆうわくしようとした時、弱音を吐いた時。駄目だって、悪いことだなんて、咎められたことはない。ただの一度も。

「俺は、怖いことも苦手なことも言ってくれた方が助かるな」

灰慈くんの低い声が鼓膜の内側で優しく響く。

「うん。灰慈くんは人参が苦手」

「ふみは猫が苦手」

「灰慈くんは朝も苦手」

「ふみは夜が苦手」

「ふふ、あとお魚の口も怖い。指、飲み込まれそうだもん」

「うん。他には?」

優しく、やさしく溶けてゆく。

「友達に嫌われることとか、こわい」

「こわいよな。でも、例えば友達に嫌われても、雨芽とか天とか流も、りるちゃんも、あの子たちはふみのこと、そう簡単には嫌わないっしょ」

「……そう……かも?」

そんな気がしてきた。というよりも、りるちゃんとぶつかったら、納得してもらえるように話し合うと思う。