メルティ・エモーション


どうしたら良いんだろ……。

下校時、バスに揺られながらスマホを開いた。動画配信アプリで【バスケ 上達法】と調べてみる。

いままで【こいぬ 天使】とか【髪 アレンジ】だったり【透明感メイク】なんて、そんなことばかり調べていたから、突然の路線変更に、スマホも「!」って、びっくりしたと思う。

初心者用のHow to動画を見てもパッとしなくて、人差し指でサッと動画をスライドさせてみるけれど、やっぱりイメージが湧かない。

「(ドリブルも出来なかったらどうしよう)」


もう、絶望的である。



「ふみ、どうしたの」


その日の夜。いつもよりちょっぴり早めに灰慈くんは電話をくれた。おねだりしたのはわたしなのに、暗い声を聞かせていたのかと思うと申し訳ない。

なんでもない、を言おうとした。

「なんでもない、禁止」

けれども灰慈くんはわたしの取扱がとても上手なので、逃げ道を塞がれてしまう。

『よわいこぶれて、いいよね』

放課後の声が、ぐるん、と胸の中を一周した。

「……あのね」と、小さく告げると灰慈くんはすぐに「うん」と頷いてくれる。

「こわいとか」

「うん」

「苦手だとおもうことを口に出すのは、悪いことなのかな」

考えても出なかった答えを灰慈くんに訊ねると、なぜか灰慈くんは黙ってしまった。