メルティ・エモーション



「でも、やっぱり結婚は難しいかな」

どうすれば灰慈くんと結婚できるかなあ、もう一押しだと思うんだけどなあ、などと頭を悩ませている間に、灰慈くんはあっさり心変わりした。

「どうして!」

「久遠寺先生が毎日泣きそうじゃん」

言葉が詰まった。そうなる未来が簡単に見えるからだ。しかし、パパにもいずれ認めて欲しいので、対策を練ろうと思う。

灰慈くんは口角をゆるっとあげて、ふ、と笑った。彼は静かに笑う人だなとふみは毎回見蕩れる。それは何も笑う時だけじゃない。いつも冷静で、行動に余裕が見られて、清潔感があって、何事も動じない。

だから余計に、わたし一人がくるくると回っている。

灰慈くんの周り、あるいは、灰慈くんの手の上で。

灰慈くんの年に追いついた時に、わたしは灰慈くんみたいに立ち回れるのかなあ、などといつも考えては、いざ高校生になってみれば、今の自分が、小学生の頃思い描いていた理想の高校生とは程遠い気がしてならない。

バスがいつもの曲がり角に差し掛かろうとしている。ああ、この幸せな時間が終わってしまう。

たまに、今からバスがエンストしないかな、とか邪な考えが過ぎるけれど、このバスが故障しちゃったら多くの人に多大な影響を与えてしまうので、今日もバスは束の間の幸せに終わりを告げる方が平和でいい。