白雪姫は寵愛されている【完】


学校の中庭。
休みで誰もいない、静かな校舎。


どうして休日なのに、用務員さんが校舎を開けてくれたのかは分からないまま、仁くんに手を引かれ着いたのは、中庭にあるテラスだった。


平日はかなり人気スポットで、人が多く中々場所が取れないらしい。

私は人が多くて行きたくないから、どれぐらい人気なのか良く分からないけど。



「お茶でいいか?」


「そ、それぐらい自分で…!」



ピッ、と押して出てきたのはペットボトルのお茶。

返そうにも貰う素振りを見せない仁くん。これはもう諦めるしかないと思う。


ま…またお金、使わせちゃいました…。


貰ったお茶を片手にテラス席に腰を下ろすと、テーブルに乗せられるケーキの箱。



「…ケーキ、食べないのか?」



どうするのかと不思議に思っていると、そんな私に対して不思議そうに首を傾げる仁くんが言った。



「こ、これ私…?」


「全部食べていい」


「え…ええ!?」



大きく左右に首を振った。


お金の事もあるし、ケーキ五個も食べきれません。


仁くんは黙って私の隣に座った。
机を挟んで前にも椅子があるのに。


どうして隣…?



「きゃっ!?」



ふわりと浮いた身体は、仁くんの膝の上に乗る。
向かい合うように座った私は急な事に硬直した。


「やっぱり軽いな」


か…顔が、近い…!



「じ、じんくんっ…離してくださ、」



綺麗な顔と男らしい身体付き。
朔也くんとは違う、男の人。



「きゃあ…!」

「暴れると怪我するぞ」



バランスを崩した身体を受け止めてくれた仁くんは、私の耳元で囁いた。



「っ……、」



どうしよう…凄くくすぐったい。