白雪姫は寵愛されている【完】




…恥ずかしい。


泣いてるところを見られた。鼻水も見られた。


ただでさえ、不細工なのに…。
泣き顔なんてもっと不細工に決まってる。



「す…みま、せん…」




見苦しい物を見せてしまった。

嫌な思い、してないといいんですけれど…。



先輩はまたフッと笑みを浮かべた。




「俺が悪い。一言、言っておけば良かっただけなのにな」




……言っておくこと、?




「…三年、前か」




涙の跡をなぞる、先輩の指。触れられてるのか分からないぐらい、ふんわりと優しく触れていた。



三年前。私が13歳、中学二年生の頃になる。




「四月に大雪が降った日、俺を助けてくれた女がいた」




…そういえばその日、記録的な積雪だってニュースでやっていたような気がした。





「それが、お前。白藤千雪」



「…え…??」





驚く私に先輩は溜息を付いて、折りたたみ傘を取り出した。




その柄には【白藤千雪】の文字。
──────…私の字。



「お前の、だろ?」




そう言われて、思い出した。