白雪姫は寵愛されている【完】


用事…ってここですか?


「…あ、の……?」

「なんだ」



女性客が大半を占める、そんなケーキ屋さん。最近テレビでも紹介されたお洒落で美味しいと評判で、長い列を作っている。


そんな所に、私と仁くんが来ていた。


正直に言うと…仁くんがここにいるイメージは全く無い。私の甘い玉子焼きも苦い顔をしていたから、きっと甘い物が苦手なんだと思う。



それなのに、ケーキ屋さんに来るって事は…。
もしかして…彼女さんにお土産、とかですか?


ズキンッ、


…あっ、また。
胸が痛い気がする。



「次の……あっ、赤髪のお客様ぁ…!」



並んだばかり…のはずが、順番を省かれ呼ばれた。

だけどそれについて誰も文句言わなかった。何故ならそこにいる女性客、全員が顔を赤らめ、仁くんに目を奪われていたから。


仁くんは私の手を引いていく。


「いらっしゃいませぇ」


甲高い、鼻につくような声とくねくねと身体を動かす店員。視線は完全に仁くんの方を向いていた。

話しかけようとする店員に反応する事無く、私の方を向いた仁くん。


…もしかして彼女さんにあげる物を、私が選んでほしいって事ですか?



確かに一人では入りずらいお店だと思う。女性をターゲットにしたピンクまみれなケーキ屋さんだから。


そっか…だから、私を連れて…。

───────ズキン、

…?、どうしてこんなに胸が痛くなるの?