見てる。ここに居る人みんなが私を見てる。
向けられる視線と声。
買い物袋を落とし、耳を塞いだ…はずなのに、聞こえてくる。
「あんな見た目でよく、ブランドの服なんて着れるわ。あたしなら絶対無理」
段々と呼吸が荒れる。
クスクスと聞こえる笑い声。
私に向けられた悪意の視線。
”その見た目のくせに、誘ってないって嘘だろ”
やめて、見ないで。
笑わないで……!
「千雪、」
─────ハッとした。
「来い」
手を引かれるが、上手く歩けない。
「…悪い」
「っっ!!」
身体を抱えられた。
車に乗り込むと、仁くんは袋を取り出し、私の口元に持ってくる。
「千雪、呼吸しろ」
「はっ…は…、」
…あれ?呼吸ってどうやるんだっけ?
上手く吸えない。吐けない。苦しい。
どうしよう…出来ない。
どうやればいいのかわからない。
仁くんは私の口に袋をつける。
「ゆっくりでいい。俺の後に続いて息しろ」
「は…は、はっ…、」
ゆっくり、ゆっくり…。
仁くんと同じように…。


