ピコン♪と携帯が鳴った。
大きな音にビクッとする。
滅多に鳴った事の無い音だったから、本当に吃驚した。
画面を開くとメールの通知。
結局メッセージアプリは使い方がイマイチ分からなくて、メールを使っている。そんな私に合わせて仁くんもメールでやり取りをしてくれているのだ。
『今、どこにいる』
仁くんから。
何処って…。
『駅前でふ』
あ…送信してしまいました。
すじゃなくて、ふってなってたのに。
ちゃんと確認して直してから送りたかったのに。もう押してしまっていた。
直ぐに返信が来る。
は、早いです…!私は凄く時間を掛けているのに…!すごいです!
『まえ』
車…の事かな?
今度は間違えないように…入力しないと。
車が、あります…ね。
…っと。
誤字は無いですね。
送信!
バッグにしまおうとすると、またすぐに鳴った。
仁くん…凄すぎます!
私も頑張らなければ…!
『前を見ろ』
同時に周りから甲高い声がした。
ゆっくりと顔を上げる。
「っ…じ、じんくん?」
私服姿の仁くんがいた。
携帯片手に。
「何してるんだ?」
「えっと…買い物に…」
紺色のズボン、黒いシャツ、灰色のシャツを上に羽織っている仁くん。シンプルなのにすごく似合ってる。制服の時と雰囲気が全然違く感じてしまう。
「あの人カッコいい!」
「話しかけてみる?」
「モデルみたーい!」
道行く人が仁くんを見てる。
そう、それぐらい仁くんは格好いい。
誰でも見てしまうぐらい─────、
「前の子、何あれ」
何処からともなく聞こえたそんな言葉に、ドクンと大きく心臓が揺れ動いた。


