白雪姫は寵愛されている【完】



溢れた涙は止まらなかった。


16歳、高校一年生。結婚出来る年齢で、半分大人な娘が大号泣。誰が見ても引いてしまう事だろう。…だけど怖くて、もう限界だった。


「ッ!?おい!」


私の頬が包まれる。
先輩の手が私を覆う。


曇る視界の先に見えるのは困り顔の先輩がいた。


伝う涙は先輩の手の甲まで流れていく。



「悪い!…突然、怖かったよな」


「ヒッ、ク……うぅ…」




焦る先輩は、私を抱き寄せた。
吃驚して硬直してしまう。



「悪い…先に言うべきだった」



……っ、暖かい。
いい匂いがする。


優しく撫でる手に恐怖が薄くなってきた。



「…泣き止んだか?」



私の顔を覗き込む先輩。




こくん。



頷いた私を見て、先輩は胸をなでおろした。



ちゃんと座るようにと言われ、座りなおすとシートベルトを着けられる。そして、私の目の前に箱ティッシュを差し出す。

鼻が痛くなりにくい、やわらかいティッシュ。
…取っていいのかな、

悩む私の前で、先輩は一枚取ると私の目尻に当ててくれた。痛くないように優しく拭ってくれる。



「フッ…鼻水出てるな」



……笑われました。



王子様みたいに綺麗。

滅多に笑わないってクラスの女の子が言ってたから、これはかなりレアなんだろう。ファンが見たら絶叫するのかもしれない。