白雪姫は寵愛されている【完】


二人っきりなんて初めてじゃない。それなのに鼓動が凄く早い。

脱衣所にそのまま連れてこられる。


「タオルはこれな。着替えは…悪い。俺のシャツで我慢してくれ」


大きな白いシャツ。
仁くんの匂いがする。

思わず顔が綻んでしまった。変な顔になってなければいいけど。

シャツとタオルの位置、それから簡単にシャワーの使い方も説明してから、出ていこうとする仁くん。


…ま、待って。


服の袖を掴み引っ張る。


「か、風邪引きます!仁くんが先に!」


そう言ってるけど、実際くしゃみしてるのは私。
頭を撫でられる。


「俺は後ででいい、千雪が先に入れ」

「で、でも」



もう冬に入る季節。まだ暖かい方だけど、それなりに気温は下がってきた。そのままでいたら風邪を引く可能性がある。


──────…ッ、また私のせいで何かなるのは嫌。


「ゆっくりでいいからな」

「あ、あの…!」


勇気を振り絞り、大きな声を出す。



「そ、それなら一緒に入りませんか?」



俯いていた顔を上げられた。
真剣な顔した仁くんが目の前に。


「……意味わかってんのか、」


頬に触れる手が熱い。


前に間違えて読んだ官能小説がふと浮かんだ。
あの時と同じシチュエーションで同じ言葉…。

途中で読むのを辞めたあの小説と、同じような状況だ。



「あっ…え…あの、」



心臓うるさいぐらい動いてて、顔も真っ赤で、恥ずかしい。

あの小説の女の人はどんな気持ちで声を掛けたのだろう?私には分からないけれど、あなたとなら。そう思えたのかな。


仁くんの手に顔を擦り付けた。



「…っ…はい、」



これが今できる精一杯の返事。