「……は…、」
………あれ?
心の中で言ったはず。口には出してないと思う。でもそれならどうして、何も反応しないのですか?
顔を上げ、仁くんの驚く顔を見て把握。
口に出してしまったのだと。
直ぐに離れ、手を前に出す。
左右に振って否定した。
「違います…!」
言うつもりなんてなかった。
私だけ幸せになんてなれない。
今まで幸せだったのは全部朔也くんがいたから。
駄目です。私だけがこうなるなんて。
──────抱きしめられた。
驚いたけど直ぐに体を押す。
「は、離して下さ…い」
どれだけ強く押しても、押し返せない。
矛盾しています。自分から抱き着いたのに、自分から言ったのに。嬉しいのに。
「千雪」
目が合って、涙が出た。
さっきまで否定し続けてたのに。もう言葉が出なくて、目も離せなくて。
彼がくれた二度目の言葉。
ずっと聞きたかった言葉。
「好きだ」
最低です。さっきまで否定していたのに。─────口に出してしまった。
「私も…す、きです」
ずっと言いたかった言葉を。


