白雪姫は寵愛されている【完】



お医者さんが来て診てもらった。思ったよりも回復が早いらしいが、あと二日ほどは入院が必要と言われた。


「奇跡とも言えますよ、これは」


溜息を吐くお医者さんと苦笑いする看護師さん。
どういう事か、と聞いた私に淡々と答える。

仁くんの刺された場所は、危うく命を落としかける所だったらしい。
あと一歩でも病院に来るのが遅れていれば、命は無かったとの事。


難波先輩はそんな事言ってなかったのに…。私に心配を掛けたくなくて言わなかったんですか?


痛々しい傷痕が見える度に胸が苦しくなった。

点滴を打たれ、まだ安静にするようにと言われた仁くんの傍で、お医者さんに頭を下げた。


「痛みはありませんか?」

「ああ、大丈夫だ」


本当はどうなのか分からない。でも私に微笑んでくれるから。私を不安にさせないようにしてくれるから。だから私も不安も懺悔も押し殺して、微笑む。

仁くんの携帯が鳴った。
ディスプレイには昴くんの名前。

慌てて取り、仁くんへ渡すとスピーカーにして電話を取った。



『仁!目覚めて早々悪いですが…麒麟の総長と副総長がそっちに向かっています』



朔也くん…!

震える私の身体を仁くんが支えてくれた。