翌日、慌ただしい音で目が覚めた。
目が覚めたと言っても全然寝ていなかったから、まだまだ眠たい。
部屋を出ると朔也くんがいた。
…朔也くんは本当に総長なんだ。
オールバックにした髪、白い特攻服。
私の知らない…お兄ちゃんだ。
「ごめん、うるさかったかな?」
優しい口調と顔。
──────…前と同じ。
近づいて来た朔也くんが目の下に触れる。
「昨日眠れなかった?」
「……す、すこしだけ」
「ごめんね、俺が傍にいてあげればよかったんだけど」
そのお陰で夜通し縫い物が出来た、なんて絶対言えない。悟らせない。
「もう少し寝てな。俺の”白雪姫”がこんな顔じゃ駄目だよ」
白雪姫…、
私は左右に首を振る。
違う。私は──────、
「私は…白藤千雪…白雪じゃない…、」
白藤朔也の妹。
今まで異性として見ていなかった。家族だった。やっぱり朔也くんはお兄ちゃんとしてしか見れない。私の”好き”は家族としての、お兄ちゃんとしての好きなの。
朔也くんは涙を指で拭いながら言った。
「ううん。白雪は…俺にとってお姫様だよ。生まれた瞬間から、俺が大事にしようって決めていたお姫様。童話から出て来てくれたお姫様」
朔也くんの手が髪から顔へ。そして手に移動する。
滑り落ちていくように私の身体に触れる。
「雪のように白い肌。漆のように黒い髪。赤みを帯びた頬と桃色の唇。純粋な瞳…、こんな完璧で美しい人なんてこの世にいると思う?」
絡み合う指と近付く顔。
「言われたんだ。お袋に。”妹を守るナイトになってくれ”って。最初はそのつもりだったさ。ずっと白雪のナイトとして守って行こうとしてた。どれだけ辛い目に合おうと絶対に俺が守ってやるって──────、」
……ッ!
突然強く手を握られ痛みが走る。
「でも──────、ナイトじゃ結ばれない。
お姫様と最後に幸せになるのは王子だ。俺じゃない。急に出てきた無関係な奴だ。俺がここまでして守っている白雪姫を、何故他の男に渡さないといけないんだ?俺の方が白雪の事を知ってる。
身体のほくろの数、バストウエストヒップサイズ、生理周期…他にも知ってる。
白雪を一番愛しているのは俺だ。他の男に渡さない。触れさせない。
俺は白雪の”王子様”だから」
そう言って笑った。


