白雪姫は寵愛されている【完】



ぎゅっと閉じたままの唇をこじ開けようとする、朔也くんの舌。


「白雪、口開けて。大丈夫怖くないから」

「……っ、っ…」


一向に開かない口に痺れを切らしたのか、朔也くんの親指が口の中に入ってきた。



「ん、ぶっ…!」

「そう、そのまま開けてて」



や、やだ。


「…コラ、閉じたら出来ないだろ?」



開けられては閉じての繰り返し。
指には沢山の唾液が付いている。


…早く終わって。


「……分かった」


離れた。

……あ…、待って。こんなに拒絶したら…朔也くんがまた朱雀の人達に何かするって言うのでは…?


「朔也く…、」

「まだまだ時間はあるからね。今日はこのぐらいで辞めよっか」


優しく頭を撫でる朔也くんに胸を撫でおろす。

…良かった。


そう思ったのも束の間。



「もしまた拒むなら、次はヒロとミコトに連絡する」



と、朔也くんは冷たくそう言い放った。

──────っ、


「分かった?」

「は、は…い」


私の返事に朔也くんはまたも笑顔を向けた。


「あ、そうだ。夕飯の話の前にする事があるよ」


手招きされて来たのは私の部屋。

持ち物を全て見せるように言われた。
鞄の中も、部屋も全部確認するらしい。


朱雀から貰ったもの全てを処分するんだ。
──────そう言われた。


「白雪、これは?」



手に持っているのは、ココアの缶。


あ、れは…。


仁くんに貰ったココアの缶だった。
勿体なくて洗ってそのまま取っていた物。


「ゴミは捨てないと駄目だろう?」

「ゴミなんかじゃ…」


でも言い切る前に止まる。
朔也くんがまた怖い顔をしたから。



「ゴミだよな?」



私の反応次第なのだろう。

きっとわかったはず。どうして捨てないでとっていたのか、誰に貰ったものなのかも…。


「は、い」


朔也くんは笑うと、ゴミ袋の中にいれた。


「ああ、それと…」


私に近付きポケットに手を入れた。
出てきたのはクマのマスコット二つ。


「血が付いてるな?」


思わず持ってきてしまったもの。



「これは誰の物だった?」