「…キ…ス…?」
「そう、分かる?」
ドクン、ドクンと心臓が波打つ。
「わ…、私やり方…分からなくて……」
分からないわけがない。
何故ならそれは──────、
仁くんがしてくれた事だから。
「大丈夫、俺が教えてあげるから」
「わ、たし…、後で予習…しておきます」
無意識に唇を隠し顔を逸らしてしまった。
だけど朔也くんは一瞬で私の顔を戻す。
「っっ…!」
「勉強熱心だね。でも俺が全部教える。キスもセックスも手の繋ぎ方まで全部ね」
い、痛い…!
「俺の事好き、なんだろ?」
好き…そうですよね。
好きなら…普通、するんですよね…?
分かっています…分かって…。
好きなら…好きな人と…。
”俺は今千雪とキスがしたい。”
やめて…やめてください。
こんな時に出てこないでください。
こんな──────、
「…は、い…好きです…」
揺らぐような事思い出さないでください。
「俺も好きだよ」
微笑んだ朔也くんと、固定された顔。
そのまま拒むことも出来ないまま唇が重なった。


