白雪姫は寵愛されている【完】



「……今度もジンに対する涙?」


違います…これは…。


「私…何もしらなくて…ごめん、なさ…っ」


何も知らなかったんじゃない。
知ろうとしなかったのだ。

平穏を選んでしまったのだ。私は。



「俺には同情で泣くのか」

「っっ…!!」



頬を掴まれた。


「ジンにはそうやって泣いてなかったよな?なんで俺にはそんな涙を見せる?」


頬が痛い。
掴む手の力が強い。



「同情なんていらない。俺が欲しいのは白雪の心だ。俺に対して心の底から愛おしいと思う心が欲しい」



あの時仁くんに向かって思った事だった。
それを朔也くんは求めている。


っ…そんなの…無理です…。
だって私、仁くんの事が──────、



『ちょっと!!サクヤ──────!!?』



キーンと音がした。
朔也くんの携帯から宏くんの声が響く。


『もう実行していいわけー?早くしてよ!みんな待ちくたびれてる!!』


手が離れ、じんじんと痛む頬。
朔也くんがもう一度携帯に耳を付ける。


「俺が合図したら行ってくれ」

「ッ、ま…待って!」


朔也くんが合図するだけで、朱雀の人達が酷い目に合う。


どうにかして止めないと…。
──────でもどうやって?


今まで守られてばかりだった。こんな時どうしていいのかわからない。”守る”にはどうすればいいのかわからない。



「やめ……、」



やめてと言って止めてくれない。
さっきそう言ったばかりだ。

それで変わらなかった。