白雪姫は寵愛されている【完】




「……なに?」


不機嫌な顔してる。
きっと私が仁くんの名前を出したからだ。


「あ…の…、何かあったの…かなって…」


震えている声で無理矢理言葉を繋ぐ。


「それは俺に対して?それとも─────、ジンに対して?」


仁くんの名前に身体がビクリとした。
隠し切れない本音が出てしまった。



「俺よりもジン?」



朱雀で何度か感じている空気、オーラ。
でもそれ以上の恐怖を感じた。

本当に殺されるんじゃないかと思うほどに。



「……っっ、ご、ごめ…な…さ…」



近付く朔也くんに一歩、また一歩と後退りする。
ドンッと腰に当たったのはダイニングテーブル。

冷たく見下ろされ、恐怖はより一層と感じ身体が小刻みに震える。

そのまま押し倒され、朔也くんの手が私の顔のすぐ横に大きな音を立てて叩きつけられた。



──────ヒッ!



「白雪、俺の事好きって言ったよな?」




目が、怖い。




「ジンよりも俺が好きなんだよな?」

「っ……、あ…、」




言った。朔也くんが好きだって言ったばかりだ。何も言えずにいると大きな溜息が聞こえてきた。それでさえも私を更に恐怖へと落とす。


「その場しのぎで言ったって事?…俺の事馬鹿にしてる?」



突然携帯を取り出す朔也くん。何処へ電話をかけ始める。


「ヒロか?そっちはどうなってる?」


…宏くんの事?そっちって…なに?
何の話を──────、


「ジンがいない今がいい。そのまま乗り込んで、朱雀を全滅させてやれ。玄武と同じように…いや、玄武以上にだ。どうせ準備もまだだろう。金属バット、鉄パイプ…武器になるもの全部使ってやってやれ」