白雪姫は寵愛されている【完】



どうやって帰ったのか覚えて無い。


朔也くんに言われるがまま、車に乗り込んで気付いたら家にいた。


何か話しかけられていた気がしたけど。
私はずっと上の空でよく覚えていない。


「白雪、聞いてる?」

「……あ…えっと、」


……なにか、話してたのかな。
どうしよう全然聞いてなかった。


「今晩の夕飯は何が食べたい?」


食べる気になんてなれない。だけど朔也くんは笑顔で話しを続ける。



「今日は白雪がようやく自分の気持ちに気が付いた日だからね。少し豪華にしたいね」



………自分の…気持ち…。

制服についた血に目を向ける。
──────仁くん。


「白雪?…泣いてるの?」


零れだした涙を朔也くんが指先で拭う。

仁くん…会いたいです…。
声聞きたい…。


「じんくんっ…」


さっきまで微笑んでいたはずの朔也くんが真顔になった。

私は思わず口を抑えた。自分でも仁くんの名を出してしまったと分かったからだ。


着信音と同時にピピピと音が鳴った。
顔を上げると朔也くんが携帯を見ていた。


もしかして、仁くんの事…?
仁くんに何かあったの?