白雪姫は寵愛されている【完】



「…ッ、う゛」



苦しそうな声を漏らす。その後ろで美琴さんがこっちに近づいてくるのが見える。病院の単語が聞こえたから、連れて行ってくれるのだろう。


良かった…これならきっと仁くんもすぐに…。



「白雪は行かなくていいだろ」



朔也くんに腕を引かれた。


「ミコト、連れてけ」

「チッ、ほんと人使い荒い総長様だな」


乱暴に引きずっていく美琴さん。


「っ…、あの、」

「あ゛?」

「っっ…、」


美琴さんに睨まれ言葉が詰まる。


「なんだよ?」


”優しくしてください。”そんな言葉も言えない。

朔也くんが後ろから私の身体を抱きしめた。
美琴さんに向かい、しっしっと手で払う。


「間違えるなよ。ミコト」

「……あー、分かってる」


…行ってしまう。

仁くんに伸ばした手は朔也くんに掴まれて、指が絡まり口元へ。手の甲へと落とされるキス。




「帰ろう、白雪。俺達の家に」




抵抗も出来ないまま、私は朔也くんに引かれて反対方向へと歩き出す。


…神様お願いします。
仁くんを助けてください。

私はどうなっても構わないから──────。


そう思いながら、ふらつく足でついていった。