朔也くんは満面の笑みを見せ私の手の甲にキスをする。
「俺の事好き?」
「っっ……、」
俯き頷いた私の顎を持ち上げる。
「口で言え」
「っ……すきです…」
きっとそんな顔していない。
涙が溢れて、止まらない。
悲しくて悔しくて。
好きだなんて顔してない。
だけど朔也くんは嬉しそうに笑った。
「やっぱり俺達は両想いだったんだね」
抱きしめられそうになる。
…が、仁くんの傍へと駆け寄った。
「…白雪、」
不機嫌な朔也くんの声にビクリとするが、私は負けじと仁くんの身体を抱きしめる。
「病院…病院に行くって言った…!」
うやむやにされる前に。
「ん?あー…、忘れてた」
美琴さんは仁くんを乱暴にその場に置いた。支えようとしたが、仁くんの大きな体を一人で支えきれずへたり込む。
「ミコト、よろしく」
「はぁ?まだ朱雀にいろってか?」
楽しそうに話す朔也くんと溜息交じりで面倒臭そうな美琴さん。そんな二人を余所に仁くん頬に手を当てた。
仁くんのポケットから何か二つ落ちた。
…え?これって。クマのマスコット…?
文化祭の時に渡したものだ。
私が作ったものともう一つ歪な形のもの。
持って…いたんですか…?
だってあの時…何も言わずにいたじゃないですか…。
てっきり要らないのかと思ってたんですよ?
「…私、仁くんの事大好きです。好きでした…きっと、会った時から…、」
あなたと出会ってから…、世界に色が付いたみたいだった。
最初はずっとビクビクしてたのに。
いつの間にかいる事が当たり前になって。
…あんなに怖がってたのが嘘みたいですね。
泣き虫なのは変わらないけど。
あなたが…仁くんがいてくれたから。
──────怖くなかった。
好きだと、言えなくて…ごめんなさい。


