白雪姫は寵愛されている【完】



血はどんどん流れている。もしこのままだったら…きっと無事では済まない。


「はは、そんな簡単に死なないよ。ミコトに急所は外してもらったし、体に支障は無いと思うよ。多分だけど」

「信用出来ない!!」


こんなに大きな声は出したことがなかった。
だからだろう、朔也くんが驚いていたのは。

仁くんを強く抱きしめ朔也くんをきつく睨み付け、仁くんの身体に顔を埋めた。



「仁くん…お願い…起きてください…」



何度も何度も呟く私の髪を引っ張ったのは朔也くんだった。



「っ…う、!」

「助けて欲しい?」



ぶちぶちと抜ける髪と耳元で囁かれた悪魔のような言葉。



「病院、連れて行ってあげようか?」



病院…。



「ここからすぐ近くに大きな病院あるの知ってるよね?そこなら連れて行ってあげれるよ?あの病院なら、ミコトが刺したことも事件にならないしね。裏とも繋がってる所だから、金さえ出せば治してくれる…。そこなら良いよ」

「ッ…、ほんとう?」


痛みを忘れ、笑みが零れた。
近くならきっと直ぐに手当てが出来る。




「ただし――――――、白雪が俺の物になってくれるならいいよ」




朔也くんの唇が額に触れた。

その瞬間、何とも言えないゾワゾワとした何かが全身を駆け巡った。


「朔也くんの…物って…?なに…、ッ!!痛ッ!」


さっきよりも強く引かれた髪に顔が歪む。



「ああ、簡単に言おうか?俺と恋人みたいなことしようって事だよ」



聞き間違いかと思った。
だけど朔也くんは真剣だった。




「俺は白雪とキスもしたいし、セックスもしたい。恋人として出来る事全部したいんだよ」




──────…っ、



「…さ、朔也くんは…お、お兄ちゃん…でしょ…?」



体も声も震えてる。
声に出すのが精一杯だった。



「ああ、そうだよ。でも決まりはないだろ?妹を好きになっちゃいけないだなんて」